退職を上司に申し入れたけれども、退職するまでに3ヶ月かかったというような話はよく聞かれることですが、退職届は期限を守って提出することが大切です。
会社というのは、大勢の社員がそれぞれの役割を毎日果たしているからこそ業務が順調に進んでいくわけですから、誰か一人欠員ができると、そこで業務が滞ってしまう可能性があります。
ですから退職を決意したら、必ず提出期限を守って退職届を出すのがマナーになります。
退職届の提出期限はいつまで?
会社に就職する際には企業と労働者の間で雇用契約が結ばれますが、退職というのはこの雇用契約を解除することです。
ですから就職した時と同じように、退職の際にも所定手続きをきちんと済ませる必要があります。
退職届の提出期限は法律が定めている期限と各会社の就業規則では異なる場合がありますので、あらかじめ調べておいて期限を外さないようにしましょう。
法律で定められている提出期限
労働者の権利や義務に関しては1947年に制定された「労働基準法」および2008年に施行された「労働契約法」に詳しく定められていますが、退職に関しては民法でルールが細かく定められています。
民法第627条によれば、期間が定められていない雇用契約に関しては解約の申し入れ後、2週間で終了することになっています。
つまり、退職を希望する日の2週間前までが退職届を提出する期限ということになります。
正社員で働く大部分の人は月給制で雇用契約を交わしているはずですが、この場合には当該賃金計算期間の前半期に退職の意思を表明しなくてはいけません。
12月末日で退職したいのなら、12月15日までが退職届の提出期限ということです。
正社員ではなくて契約社員として働いている場合には、雇用期間が「1年間」「6ヶ月間」などと定められていることがほとんどです。
雇用期間を定めて労働契約を交わすことを「有期雇用契約」と言いますが、有期雇用契約を交わした場合には、退職届の提出期限が異なってきますので注意が必要です。
有期雇用契約で働いている場合には、基本的に契約期間が終了するまで退職することはできませんが、1年を超える有期雇用契約を交わしている場合、労働契約の初日から1年経過した後であれば、退職することができます。
ですから、2年間の有期雇用契約を交わした会社でも、1年を超えて勤務すれば2年間の雇用期間を全うしなくても退職できるということです。
ちなみに、有期雇用契約を交わしたにも関わらず、期間が終了する前に退職届を提出すると、就労義務放棄で労働契約上の債務不履行ということで、会社側から損害賠償を請求されるケースもゼロではありません。
各会社の就業規則もチェックすることが大切
会社側からすれば、退職届の提出期限が2週間というのはかなり短い期間です。
引き継ぎに2週間かけるのはともかくとして、職場の人材が一人分欠員となるわけですから、補充するための社員を求人広告で募集し、書類選考を行い、面接をしていると2週間ではとても足りません。
このため、民法とは別に就業規則で「退職届の提出期限は退職日の1ヶ月前までとする」と定めている会社もあります。
この場合、民法に則って2週間前までに退職届を提出しても違法にはなりませんが、これまでお世話になった会社の事情や円満退社のことを考えると、就業規則に合わせて1ヶ月前までに退職届を提出した方が得策です。
会社の中には退職届の提出期限を退職日の3か月前としているところもありますが、これは必ずしも守らなくていいというのが厚生労働省の見解です。
退職届の提出期限を過ぎてしまった場合
退職届を提出期限の2週間前までに出さなかった場合でも、会社側は労働者に出勤を強制することはできないため、「辞められない」ということはありません。
極端な話、「明日退職します」と行ってそのまま出勤しなくても、2週間後には雇用契約が解除される理由ですが、これでは到底、円満退社とは言えません。
勤め先を退職するということは職を失うわけですから、退職を決意する際には収入が入ってこなくなることを覚悟しなければなりません。
収入を続けて得ていくためには転職先の準備をしておく、あるいは独立起業の準備を済ませておく必要がありますから、これだけでも数ヶ月間の準備期間が必要になります。
要するに、将来のことを真剣に考えた末に退職する場合は、退職日の数ヶ月前には本人の意思が固まっていなければならないわけです。
退職することを決めたら、退職届を提出するのは2週間前でもかまいませんが、退職の意思があることは1〜2ヶ月程度前に直属の上司に伝えておくべきでしょう。
上司や取締役などと面談をし、事情をよく説明した上で退職届を提出すれば失礼にもなりませんし、退職に必要な書類手続きもスムーズに行きます。
特に、同種の業者に転職するような場合には、どんな巡り合わせで以前勤めていた同僚に出会うか分かりませんから、できるだけ円満な形で退職するように努めましょう。
円満退社しなかった場合のデメリット
現在勤めている会社を円満退社しておかなかった場合、転職活動で弊害が出てくることがあります。
例えば希望する転職先の面接で退職理由を聞かれた時に、円満退社しておかないと採用担当者に不信感を抱かれることがあります。
また、転職先の採用担当者が前の会社と連絡を取って、在職中の勤務態度を問い合わせる可能性もありますので、引き継ぎもろくにせずに不義理をして退職することは絶対に避けたいものです。
提出期限通りに退職届を出した後の書類手続き
退職届を期限通りに提出したら、上司とよく相談をしながら退職手続きを行うようにしましょう。
職場によっては引き継ぎに時間がかかることもありますから、退職前は業務がより忙しくなることも予想されます。
書類の手続きは早めに総務部に確認しておき、預けている書類などは忘れずに返却してもらうようにしなければなりません。
退職をする場合には年金と雇用保険の手続きをしなければなりませんが、年金通帳と雇用保険被保険者証は会社が預かっていることが多いものです。
逆に健康保険に関しては、会社を通して加入しているわけですから、健康保険被保険者証を返却するのを忘れないようにしましょう。
社員証やIDカード、名刺なども会社に返却しますが、仕事の上で他の会社の社員や得意先から受け取った名刺、在職中に作成したデータなども全て会社の財産ですから、後任者にわかりやすいように引渡しを行います。
退職した後、すぐに転職せずに失業給付金を受給する予定のある人は、会社から「離職票」という書類を送付してもらわなければなりません。
離職票というのは離職したことを証明する公的な文書で、ハローワークが発行しています。
離職票を出してもらうためには、勤務先の会社がまず「離職証明書」と呼ばれる書類を準備しなければなりません。
離職証明書を発行することによって、労働者は雇用保険から脱退させられ、失業給付金を受給できる権利を得られるようになりますが、ハローワークへ会社が離職証明書を提出する期限は退職日翌日から数えて10日以内と決まっています。
ハローワークでは提出された離職証明書をもとに離職票を発行し、会社がこれを受け取り、退職者に郵送することになります。
退職後すぐに引っ越しをする予定のある人は、離職票が間違いなく届くように新しい住所を会社に届けておくことが大切です。
離職票を受け取ったら、マイナンバーが分かる書類や印鑑、書類、通帳、身分証明書などをハローワークに持参し、失業給付金を受け取るための手続きを行います。
退職前に有給休暇を取得する場合
退職する際に、残っている有給休暇を全て消化したいと考えている人も多いはずですが、この場合には引き継ぎに要する期間プラス有給休暇の日数を考えて、退職届を提出するようにしましょう。
消化できる有給休暇が14日間あるのに、退職日の2週間前にいきなり「退職します」と告げたのでは、引き継ぎの時間が全く取れなくなってしまいます。
会社の中には退職前に有給休暇を消化することを渋るところもありますが、有給休暇の消化は労働者の当然の権利ですから、申請さえすれば会社側の許可がなくても休んでしまうことができます。
以前に退職した人の例などを見て、有給休暇の消化がトラブルになることが予想されるのであれば、定められた提出期限よりも前に退職届を出しておいて引き継ぎを早めに済ませ、後は退職日まで有給休暇を楽しむという方法もあります。
退職手続きでトラブルになったら
提出期限を守って退職届を出しているにもかかわらず、退職手続きでトラブルになった場合には労働基準監督署内にある「総合労働相談コーナー」に相談してみましょう。
全国380ヶ所に設置されている総合労働相談コーナーでは、プライバシーの保護を配慮しながら相談対応を行っています。
まとめ
これまで働いてきた職場を退職することを上司に報告するのは心苦しいものですが、職場の方としてはできるだけ早く退職の意思を表明してもらった方が、引き継ぎがスムーズに行きます。
面と向かうと「退職します」と言いにくいという人は、まずメールなどで退職の意思があることを伝えておき、アポを取ってから上司と面談することをおすすめします。
メールの件名に「退職のご相談」と書いておけば上司の方も戸惑いませんし、退職希望日を明記しておくことによって引継ぎスケジュールなども早めに組むことができます。
メールを送るのは退職日の1〜2ヶ月前が適当です。
出張所などに勤務していると上司と直接顔を合わせる機会が少ないこともあるので、メールでアポの日にちを取っておくことは大変重要です。