長年にわたって勤めてきた会社を退職するとなると、退職願を出すのは気が引けるものです。
有給休暇に関してもこれまでに全部消化していない人は退職をタイミングに使い切ってしまうのがおすすめですが、円満退職をしたいのであれば退職願を出すタイミングなどに気を配ることも大切です。
どのように退職願を出せばいいのか、どんなタイミングで退職の意を表明すればいいのか、前もって調べておいて損がないように退職するのが理想的です。
上手に退職願を出せば失業保険をもらう際にも手続きがスムーズに行きますし、転職する場合でも社会保険などの引き継ぎを問題なく行うことができます。
できるだけ波風を立てずに、しかも損をしないで退職できるコツをピックアップしてみましたので、ぜひ参考にしてみてください。
退職願を出す前に有給が取れるかどうか確認する
会社を退職する際に気になるのが有給休暇です。
一定期間勤めていれば誰でも有給休暇をもらうことができますが、職場が忙しいとなかなか有給の申請をできないことがあります。
こんな場合でも、退職を一旦決めたら残っている有給休暇を消化して円満に退職することができるのです。
有給休暇は誰でももらえるの?
有給休暇というのは正社員に限らず、派遣社員やパート・アルバイトでも取得することのできる労働者の当然の権利のひとつです。
有給休暇をもらえる条件としては、まず出勤率が8割以上であることが大前提となります。
これに加えて正社員、フルタイムの契約社員、または週30時間以上勤務のパート・アルバイトの場合には入社後6ヶ月経過していれば問題なく有給休暇を取得することができます。
これ以外に週4日出勤のパート・アルバイトで入社後3年以上経過している人、週3日出勤で入社後5年以上経過しているパート・アルバイトの人も有給休暇をもらうことができます。
日本は有給休暇の取得率が世界的に見ても最低レベルであることで知られていますが、2019年4月からは有給休暇が義務化されましたので、退職する際に有給を消化すると言っても会社が反論しにくい環境が育ってきています。
有給休暇の消化率
終身雇用制が当たり前で、有給休暇も思うように取得できないというのが以前の日本の姿でしたが、2019年4月に「働き方改革関連法」が施行されたことにより、有給休暇5日取得なども義務づけられるようになりました。
働き方改革関連法が施行される以前の日本では、有給休暇の取得率はわずか50%で、取得率が100%のフランスやドイツ・スペイン・ブラジルと比較すると雲泥の差がありました。
日数に関しても取得率100%の国々では30日の有給休暇が支給されているのに対して、日本で労働者に与えられた有給の平均日数は18.2日、実際に消化した日数となると10日未満というのが現状です。
つまり、日本ではもともと有給休暇の日数が少ない上に、すべて消化する人は半数程度しかいないということになります。
このような現状をよく踏まえてみると、退職する際に有給をどの程度消化できるかは勤務している職場次第ということになってきます。
職場の平均的な有給消化率が50%なのにも関わらず、自分が退職時に100%消化しようとすれば上司や会社が難色を示すのは無理もないと言えないこともないわけです。
取得できる有給休暇の日数
正社員などフルタイムの労働者の場合、6ヶ月勤務すれば10日間、1年半勤務すれば11日間、そして5年半勤務すれば18日間というのが取得できる有給休暇の日数です。
アルバイトなどで週の労働日数が少ない場合には当然有給休暇の日数も少なくなりますが、有給を取得する権利があるという点ではフルタイムの労働者もアルバイトも同じです。
退職するにあたってはできるだけ有給休暇を残さない形で消化するのがお得ですが、同僚の有給取得状況などを参考にしながら常識的な範囲で有給を申請するのが無難かもしれません。
退職願を出すタイミング【有給を逃さないために】
退職する意思が固まったらできるだけ早く退職願を出すことをおすすめしますが、期間が定まっていない雇用契約を会社と結んでいる場合には退社したい日の2週間前までに退職する意思を伝えれば大丈夫です。
退職することを示すには、普通は上司に直接口頭で伝えますが、後になって「辞めたいということは聞いていたけれどももっと先のことだと思っていた」などと言われないためには「退職願」または「退職届」の形で文書として提出する方が安全です。
文書で退職日を明記しておけば、退職手続きの際にもトラブルになることがありません。
有給を消化する場合には早めに退職願を出すことが大切
退職する際に有給休暇を消化するつもりなのであれば、出来るだけ早めに退職願を出しておくことをおすすめします。
有給というのは2年の間消化しないと消滅してしまいますが、逆に言えば2年間の有給休暇を貯めている人であれば20日間以上の有給休暇が消化しきれずに残っているケースも少なくないわけです。
これを退職前に一挙に消化するとなると2週間前に退職願を出しても間に合わないので、それ以前に退職するつもりであることを上司に打診しておかなければなりません。
職場では引き継ぎなどもありますので、消化したい有給休暇の日数プラス2週間前までには退職願を出せるように準備しておきましょう。
退職願兼有給休暇消化申請書の書き方
退職願と有給休暇消化申請書は別々に作成して提出してもいいのですが、2つを合わせたものを提出してしまってもかまいません。
書式は複雑なものではなく、退職理由をこまごまと説明する必要もありませんので、思い立ったらその日のうちに作成してしまえば気分が楽になります。
書類は、本来は手書きで書くのが筋ですが、最近ではパソコンで作成してプリントアウトする人が多くなっています。
手書きの場合には黒のボールペンか万年筆を使用し、A4かB5用紙に必要事項を書き込みます。
プリンターでプリントアウトする場合にも用紙はA 4かB5を選択し、インクは黒にします。
退職願兼有給休暇消化申請書【例文】
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退職願兼有給休暇消化申請書
◯年 ◯月 ◯日
◎◎◎株式会社
代表取締役社長 ◎◎ ◎◎殿
△△市△△町◯番◯号
◎◎◎株式会社
△△ △△(自分の氏名)印
先に◯◯年◯月◯日に上司である●● ●●に口頭で申し出た通り、一身上の都合により、◯年◯月◯日をもって退職させていただきたく、ここにお届けいたします。
また、◯年◯月◯日より◯年◯月◯日迄の、土日祝日を除く◯日間の年次有給休暇の消化を申請させていただきますので、何卒ご了承お願いいたします。
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退職願兼有給休暇消化申請書を手渡す場合
退職願兼有給休暇消化申請書は通常の場合、職場の上司に手渡しします。
渡す時間帯としては仕事がまだ立て込んでいない朝一番、あるいはお昼休みのちょっと前が理想的です。
何の前触れもなく退職願を手渡すと上司の方も驚くだけではなくて、引き継ぎの面で困ることがありますから、退職するつもりであることは退職願を渡す前に前もって言っておくようにしましょう。
渡しにくいからといって上司の机の上に置いておくのはNGです。
上司が確実に受け取ったかどうか確認できませんし、引き継ぎに関しての相談をすることもできませんので、必ず直接手渡しするようにします。
上司に退職願を提出することを前もってメールや LINEで知らせておくのもいいアイディアです。
退職願を郵送する場合
退職の意思は表明してあるけれど、職場の方から「今辞められても困る」「どうしても辞めたいというのなら損害賠償を請求する」などといわれており、とても退職願を手渡しできる状況ではない場合もあります。
こんな時には退職願を郵送した方がトラブルを避けることができます。
退職願を手渡ししても「受け取っていない」と突っぱねられる可能性がありますが、書留で郵送していれば確かに受け取ったという証拠が得られますので、トラブルになった際にも有利です。
ただ、書留の郵便だけでは「確かに郵便は送ったけれどもどんな内容かは証明することができない」状態ですから、後々のことを考えると内容証明郵便で送る方が得策です。
内容証明郵便では送った書類の内容が郵便局にも保存されますから、会社側としても「退職届を受け取っていない」と言うことはできなくなります。
内容証明郵便を送るためには所定の書式で文章を作成しなければならず、一枚の紙に入る字数も決まっているので、あらかじめルールを調べてから退職願を作成するようにします。
内容証明郵便の料金には基本料金の他に書留料金も含まれていますが、いつ相手が郵便を受け取ったかを確実にするためには「配達証明」を付けておくことをおすすめします。
配達証明を付けることによって、雇用契約解除の意思表示がいつ相手に届いたかを容易に証明することができるようになります。
尚、内容証明郵便の料金は440円(2枚目以降は260円増し)、配達証明の料金は320円です。
まとめ
退職をするのと同時にこれまで消化できていなかった有給休暇をまとめて取得するのは労働者としての当然の権利ですが、日本の企業では長期の休みを思い切って取れないという雰囲気が強いことも確かです。
ですから、引き継ぎは有給休暇を取る前に全て済ませておいた上で休暇に入り、そのまま職場に戻らずに退職してしまうのが最も自然な流れと言えるでしょう。
会社を辞めるとはいっても同僚への気配りは忘れないようにしたいものです。