せっかく就職した職場だけれど雰囲気が合わないから退職したいという場合に気になるのが、「どうやって退職の意思を伝えるか?」ということです。
電話で伝えるだけでいいのかどうか不安に思う人もいるかもしれませんが、電話だけでも退職の意思を伝えるのは法的にOKです。
本来であれば電話ではなくて直接上司に会って退職する意思を伝えるがマナーなのですが、会社の雰囲気が予想していたものとは違っていて「出社するのもイヤ」という場合には会社に電話をかけて退職することを告げてもかまいません。
5年や10年など長年勤めた会社なのに電話一本で退職するとさすがに違和感がありますが、勤め始めたばかりで「どうしても職場が肌に合わない」というのであれば、我慢せずにできるだけ早く辞めてしまった方がストレスも溜まりません。
また、会社の方でも代わりの人員を早く見つけることができます。
電話で退職の意思を伝える際のポイント
電話で退職の意思を伝える際には、「今の職場を退職して自分は何をしたいと思っているのか」「勤めを退職して生計はどうやって立てていくのか」を最初によく考える必要があります。
単なる思いつきや朝起きた時の気分で退職を決意し、後から後悔するのでは何にもなりませんから、慎重に事を運ぶようにしたいものです。
電話はいつでもどこからでも気軽に掛けられるというメリットがありますが、その反面、軽率に行動してしまって後から「しまった」と思うことにもなりかねません。
職場を退職する・しないは自分の一生に関わってくることですから、電話をする前にまず話さなければならないポイントをメモしてみることをおすすめします。
自分の気持ちをメモに書き出して整理しているうちに、本当に今の勤め先を退職したいのかどうか、退職せずに仕事を続けていく可能性はないのかどうかを検討することができます。
何度も考え直してみてもやはり退職することを決意したというのであれば、マナーをきちんと守って電話をするようにしたいものです。
誰に電話するかを明確にする
電話をかける前には、まず「誰に電話をしたらいいのか」を明確にします。
通常の場合、退職する意思のあることを告げる相手は直属の上司ですが、肝心な上司との仲がうまくいかなくて退職したいような場合には役職がもっと上の上司や人事担当者に電話をかけるのも一つの案です。
就業規則に退職届を出す部署が明記されていることもありますから、その場合には指定の部署に電話して退職の意思を表明します。
電話をかける時間帯
電話はいつかけてもいいというものではなくて、できるだけ相手が時間的に余裕のある時間帯を選ぶことが大切です。
例えば朝の始業時間のころは業務もまだ本格的に始まっておらず、1日の仕事の準備をしている段階なので、この時間帯に電話をかけるのがおすすめです。
お昼時間の少し前も仕事が小休止になりますので、朝の時間を外した場合にはこの時間帯に電話するようにしましょう。
会社が終わる時間帯に電話をかけて「退職します」と告げてもネガティブな印象を与えてしまいますので、やめておいたほうが得策です。
退職理由はどう伝えたらいいの?
退職理由をどう説明したらいいのかわからなくて電話するのを延ばし延ばしにしている人がいますが、理由はごく簡単に「一身上の都合」でかまわないのです。
たとえ直属の上司や同僚に不満があったとしても、電話でそれを説明するのは好ましくありませんし、相手には単なる愚痴としか聞こえません。
どうしても一身上の都合だけでは納得してくれない場合には退職理由を「体調不調」としておけば無難です。
体調不調が理由であれば会社側としても無理に引き止めることはできないので、退職を認めざるを得ません。
電話で必ず伝えなければならないこと
電話で必ず伝えなければならないのは「退職日」です。
法律では「退職日の2週間前まで」に意思を表明しなければならないと定められていますから、必ず日にちは明確にしておくようにしましょう。
工場など雑音が多い職場の場合であれば、電話をした後にメールかLINEで確認のために退職日を送付しておくのもおすすめです。
電話で退職の意思を伝えた場合の手続き
退職することを伝えたら、退職のための手続きに入ります。
今勤めている会社の退職手続きをしっかりとしておかないと新しい会社にスムーズに転職できなかったり、失業保険を受給するのに手間取ったりすることがあります。
会社に返却しなければいけないもの
まず会社から預かっているものがあれば、速やかに返却しなければなりません。
社員証やIDカード、名刺、社用携帯電話などが会社から預かっている代表的なものですが、名刺に関しては自分のものだけではなく、仕事を通じて受け取った名刺は全て返却するのが原則です。
会社を通じて健康保険に加入している場合も健康保険被保険者証を返却する義務があります。
もうひとつ、自分が仕事上で作成したデータや書類なども会社に返却することを忘れないようにしましょう。
職場に行って上司と顔を合わせるのが嫌だから電話で退職することを告げたという人は、返却を郵送で済ませることもできますが、「送った」「受領していない」でトラブルにならないためには書留で郵送しなければなりません。
会社から返却してもらうもの
雇用保険被保険者証と年金手帳を会社が預かっている場合には、転出先企業に提出しなければならないので必ず返却してもらわなければなりません。
雇用保険被保険者証は失業給付を受けるために必要ですから、退職した後すぐに他の企業に転職する予定のない人にとっては大事な書類です。
雇用保険被保険者証を紛失してしまった場合には居住地管轄のハローワークで再発行してもらうこともできますが、被保険者番号が必要になるので万が一の時のために自分で番号を控えておくといいでしょう。
源泉徴収票も所得税の年末調整に必要な書類ですから、発行してもらって転出先の会社に提出します。
退職した年のうちに再就職しない時には所得税の確定申告に使用することになります。
離職票も退職手続きには欠かせない書類ですが、離職票は会社が作成するものではなく、会社が離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークに提出することによって離職票が発行されます。
会社の担当者は発行された離職票を退職者に郵送しますので、退職日の10日後ぐらいに離職票が送られてくると思えばいいでしょう。
転職先がまだ決まっていない場合には、離職票が家に届いたら管轄のハローワークに行って失業保険の給付手続きを行います。
失業保険として給付される額は退職理由によっても異なってきますので、電話一本で退職する場合でも最低限のマナーは欠かさないようにしておきたいものです。
失業給付金を受けるための手続き
失業保険を受けるためには離職票と一緒に雇用保険被保険者証、運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書、写真2枚(縦3cm✕横2.5cmで直近3ヶ月以内に撮影したもの)と印鑑、そして本人名義の普通預金通帳をハローワークに持参します。
ハローワークで書類手続きを済ませると、7日間の待機期間を経た後に雇用保険受給説明会に出席することになります。
失業認定日に出頭することによって約1週間後には失業保険の給付を受けることができますが、以降も4週間に1度は失業認定日に出頭することで失業保険を給付してもらえます。
失業給付金をもらうことは労働者の当然の権利ですが、「失業中であること」「ハローワークに求職の申し込みをしていること」「退職日以前の2年間に通算で12ヶ月以上の雇用保険加入期間があること」の3つの条件をクリアしていなければなりません。
ですから、民間の転職サイトに登録すると同時にハローワークも大いに活用した方がお得です。
電話で退職の意思を伝える【例文】
電話だけで退職の意思を伝えるということは、「会社に行きたくない」あるいは「行きたくても行けない」事情があるということです。
とはいえ、退職の意思を伝えた後に種々の書類手続きが残っているわけですから、ぶっきらぼうに「会社を辞めます」とは言わずに、「電話での連絡で大変申し訳ないのですが…」などとお詫びの言葉を述べておきましょう。
こうすれば相手に与える印象が全然違ってきますし、書類手続きもスムーズにやってもらうことができます。
退職したいと言っても会社が渋ることが目に見えているような場合にはスマホの録音アプリなどで会話の内容を録音しておくことをおすすめします。
例文①
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お疲れ様です。アルバイトの◯◯です。
電話での急な連絡で恐縮なのですが、一身上の都合で本日をもって退職させていただきたく存じます。
本来であれば出社して直接お伝えすべきところですが、お預かりしている社員証や名刺などは後日郵送させていただきますので、よろしくお願いいたします。
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病気やケガで入院してしまった場合などはもちろん出社することができませんので、電話で退職の意を表明することになります。
例文②
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お疲れ様です。◯◯課の△△です。
しばらく出社できず、大変申し訳ありません。実は病気で先週から急遽入院となり、仕事を続けられない状態になってしまいました。
電話でお伝えするのは大変心苦しいのですが、退職させていただきたいという結論に達しました。退職届は後日郵送させていただきますので、何卒宜しくお願い致します。
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まとめ
退職の意を上司に伝えるのはなかなか緊張するものですが、電話にしろ直接にしろ、早めに意思を表明しておかないと職場としても引き継ぎなどで困ることがあります。
電話する前に言わなければならないことをメモし、声に出して練習すれば少し緊張が解けるはずですので、ぜひ実践してみてください。