退職交渉は、人生において非常に大きな岐路になります。退職交渉の結果は、今後の人生を大きく左右するといっても過言ではありません。しかし、いざお世話になった上司と対面すると、交渉の仕方がわからなくなってしまう方も多いのではないでしょうか。
そこでここでは、退職交渉をスムーズに進めるためのコツをまとめていきましょう。今から退職交渉をしようと考えている方はもちろん、いずれ退職を考えている方もぜひ参考にしてください。
退職するときは「交渉」ではなく「報告」という形のほうがいい
現職に退職を伝える際、意識すべきなのは「交渉をする」というスタンスよりも、「すでに決まったものを報告する」というスタンスです。「退職をする」ということはあくまでも決定事項として扱い、「その上で退職の日時と業務の引き継ぎについて相談したい」という態度で臨みましょう。
特に自分の都合で辞める場合、お世話になった会社への引け目から退職を「相談」という形で持ちかけてしまうと、引き留めにあって思うように退職交渉が進まない可能性があります。よって、退職交渉をする際は、自分の決意を頑として固めましょう。
円満に退職したい場合は、まずはお世話になった上司に「相談したいことがある」と時間を取ってもらい、「退職します」ということを伝えましょう。その後は、人事権のある上司に退職の旨を伝えてください。ここで退職するという態度を崩さなければ、各種調節の後、退職できるはずです。
退職を文字にすると簡単ですが、退職交渉を切り出すのは苦しいものだと思います。そこで以下では、今から退職をする際、知っておくと退職交渉が有利になることを2つ紹介します。
法律では退職の意志を伝えた2週間後に退職可能
退職するためには会社の許可が必要だと考えている方も多いかもしれません。しかし、法律では退職の決定権は労使の双方にあると定められています。極端な話、労働者が退職の意志を伝えさえすれば、2週間後に労使関係は自動的に停止されるのです。
そのため、万が一会社が「絶対にやめさせない」「違約金を払ってから辞めろ」と強烈に引き留めたとしても、労働者側が退職の意志を会社に示した時点で、退職のカウントダウンははじまっています。なので、「退職できないかもしれない」ということに悩まされる心配はありません。
ただ、いきなり辞められると会社の方も引継ぎなどで迷惑を被りますし、退職する方も気持ちよくやめられません。なので、残務整理や日程調整を行う退職交渉が存在します。いうなれば、退職交渉はお互いのためを想っての行動なのです。
もし退職という言葉に良い顔をされない場合は、「あくまで会社のために交渉をしている」ということを思い出しましょう。
円満に辞めたいのなら退職を伝えるのはなるべく早めに
退職の決定権はあくまで労働者の方にもあるとはいえ、できる限り波風を起こしたくないのが人心です。もしそう思うのなら、退職交渉を切り出すのは出来る限り早めに行っておきましょう。
どれだけ遅くても1か月後、できるのなら2カ月前ぐらい前から退職の意志を切り出しておくのが適切です。そうすることによって残務整理が行う余裕ができますし、業務の引き継ぎや仕事の調節などがうまくできるからです。
退職を控えている微妙な雰囲気で1ヵ月以上も仕事したくない、という方もいらっしゃるかもしれません。その気持ちはわかります。しかし、ネガティブな退職理由でないのなら、負い目を感じる必要はありません。
円満退社を望むのなら、なるべく早めに上司に退職を伝え、あとは退職が公示されるまでは普段通り仕事をしましょう。
退職交渉をする前の注意点。規則の確認はしっかりと
退職理由をはっきりさせ、退職後の流れも何度もシミュレート完了。いざ、退職交渉のために上司に話を切り出そう、と勇んでいる方は、一度立ち止まってください。その前に意識しておくべき点があります。
退職交渉は労働者主導で進められますが、以下の3つの注意点を把握しておかないと、お互いが納得する円満退職から離れていってしまいます。
ひとつめは「就業規則の確認」です。就業規則は法律よりも優先されるものではありませんが、それでも退職について大切な決まりごとが多数記載されています。
ふたつめは「引継ぎを行っておく」という点です。退職すると、これまで自分が担当していた仕事は他の誰かがやることになります。それを誰がやるのか、中途半端な案件はどうなるのか、話し合っておきましょう。
みっつめは、「会社からの残留交渉には応じないようにすること」です。会社は、貴重な労働力を失わないために色々な条件を提示してきます。それがどんなに魅力的な条件でも、揺るがない覚悟を決めておきましょう。
以上の3つの点に関して、以下で詳しく解説します。
就業規則を確認しておく
就業規則とは、会社で働く上で守るべきルールの書いてある文章です。パンフレットのような形で配布されている企業もあれば、インターネット上に掲載している企業もあります。どのような形で提示されているのかは企業によって異なるので、各自確認してください。
退職の際に見るべきなのは、就業規則の内、「退職に関する頁」です。大抵の就業規則には「退職の意志を何日前に提示すべきなのか」について記載があるので、ここを確認しましょう。
もちろん法律では14日前とされてはいますが、就業規則は「会社に損害を出さないため、守ってほしい規則」です。よって、円満退社を目指すのならここを確認し、退職の手順を正しくこなすようにしてください。
引継ぎはしっかりと
業務の引き継ぎは、会社にとっては急務です。特に退職者が重要なポストにいればいるほど業務の引き継ぎの重要性は増します。よって、まずは自分の中で「どの業務をどのように引き継ぐのか」ということを整理しておくといいでしょう。
あらかじめ、仕事の引継ぎについて話をまとめておけば、会社に損害が出ることもありませんし、本人も気持ちよく退職ができます。また、会社のほうもわざわざ退職希望者を引き留める理由もなくなります。
もちろん、誰にどの仕事を引き継ぐのか、進行中のプロジェクトはどのような形になるのか、最終的な決定を下すのは会社です。しかし、退職者の方が引継ぎに関して話をまとめておくことで、会社のほうも人員の埋め合わせやスケジュールの調整がしやすくなります。
よって、あらかじめ引き継ぎに関するスケジュールや資料はまとめておいたほうがいいでしょう。
会社からの交渉には応じないと言い聞かせる
退職しようとしている人が、会社にとって有用な人材だった場合、会社は何か条件を出して退職者を引き留めようとします。退職交渉に臨むときは、それに応じない覚悟を持つことが大切です。
退職者に出される要求は、昇給・昇格・待遇の改善・原因の除去・有給の提案などがあります。現時点からすると、それらは魅力的な提案に見えるかもしれません。
しかし、言い換えれば、現職は退職というカードを見せなければ、要求に応じない会社ともいえます。また、いまその瞬間は状況が改善したとしても、いずれはまた同じ状況に戻る可能性はゼロではありません。
よって、一度退職すると決めたのなら、最後まで意志を通すべきです。退職を決めた時点で、覚悟を持ってやり遂げましょう。
退職交渉をしたあとは?
退職交渉をしたあとは、決めたスケジュールに併せて退職までの時間を過ごしましょう。業務の引き継ぎ、残務処理など、やるべきことはたくさんあります。退職が決まったからといって業務をおざなりにせず、給料を貰う以上は、最後まで全力で業務にあたりましょう。
このときに注意したいのが、退職するからといって、他の同僚に不満をぶちまけないようにするということです。ネガティブな理由での退職ですと、どうしても不平不満を他の人に話したくなるかもしれません。
しかし、そうしたネガティブな言葉は他の人のモチベーションに大きな影響を与えてしまいます。それが会社の損害になってしまうこともあるでしょう。退職者にとっては古巣かもしれませんが、そこで働き続ける人を妨害する必要はないはずです。
また、退職する前に転職先がわかっている場合は、むやみに転職先の情報を喋ったりしないように気を付けましょう。実際に転職を妨害されたケースがあるからです。
退職交渉に必要な事項を上司に伝えても、なかなか返事が返ってこないことがあります。そのときは、しつこくない程度に、「今どうなっていますか」と上司に返事を催促しましょう。時に退職交渉は時間がかかるものなので、その点には留意してください。
あとは、有給休暇を消化するスケジュールも考えておきましょう。理想は、引継ぎのスケジュールと残務整理が全て終わった段階です。次の職場への充填期間にし、存分に英気を養いましょう。
退職交渉に応じてくれない場合は強制力のある手段も
退職に際して金銭を要求されたり、懲戒解雇にするといって脅された場合も、揺らぐ必要はありません。なぜなら、退職に際して金銭を要求することは基本的に禁止されており、懲戒解雇は明らかな犯罪を行った場合にしか認められていないからです。
他にも、パワハラや会社が原因の鬱が理由で退職するのにも関わらず、「自己都合での退職」を強制される場合もあります。この場合も、会社が退職の原因である証拠さえそろっていれば、ハローワークで強制的に会社都合での退職へすることが可能です。
円満退職は大切ですが、場合によっては強制力のある手段に踏み切ることも大切です。労働者が持つ当然の権利として、頭の隅に置いておきましょう。
まとめ
退職交渉は、円満退職をする上で非常に重要な手順です。退職交渉をスムーズに進めれば、円満退職はすぐそこにあるといってもいいでしょう。
しかし、退職交渉は考えられているよりも時間のかかる作業です。特に退職者が会社にとって有能であればあるほど、お互いの意見は平行線をたどってしまうかもしれません。
そんなときは、前述した強制力のある手段を頭の隅に入れつつ、退職交渉を続けましょう。時には、自分のわがままを押し通すことも重要なのです。