主に退職後の生活資金として役に立つ退職金は、大体の場合ある一定期間会社に勤めているともらえるものです。
しかし退職金を必ずもらえるのかというともらえない場合もあります。
今回はそんな退職金をもらえる条件について解説していきたいと思います。また退職金を会社が払ってくれない時の対処法も紹介しているので、退職金をもらえなくて困っている人は、実践して必ず退職金を勝ち取ってください。
そもそも退職金とは何なのか
退職金は退職をする際に恩恵的な意味合いで渡すものなため、法律上定められておらずもらえない場合も多いです。そのため退職金が未払いだからといって会社によっては請求しても無駄に終わります。
ただ退職金制度を採用している会社は多いため、もらえる・もらえないなどのトラブルが発生しないようにある程度ルールを設けています。例えば勤続年数3年以上で給付などが一般的で、それはその会社の募集要項に記載していることが多いです。
このように退職金は雇われる側に大きなメリットがありますが、実は会社にとってもメリットがあります。退職金制度がある会社は、労働者のことをしっかりと考えていると伝わってくるため求人も増える場合が多いです。
他にも退職金があるため労働者の長期雇用にもつながります。例えば勤続年数3年で退職金がもらえるというルールがあれば、少なくとも3年は頑張りたいと考える人が多いです。そうすると個人個人の能力も上がって、会社の生産性も上がります。
こういった具合に退職金は雇う側・雇われる側双方にメリットがある制度です。
退職金の種類について
退職金には一時金のものと年金で支払われるものがあります。
退職一時金は退職した時に一括で支払われるもので、支払いの基準は就業規則に記載されています。
企業年金は退職後に年3回や年6回など分割で支払う方法です。
たいてい退職一時金か企業年金のどちらかで退職金は支払われますが、会社によっては選ぶこともできるので、自分にとって都合の良い方を選びましょう。
ただ零細企業など資金に余裕がない会社は、退職金共済という制度を採用していることがあります。
退職金共済というのは会社が中小企業退職金共済本部と契約を結んで、掛け金を渡して受給者とのやり取りを任せるというものです。そして受給者は共済本部に行って退職金を受け取ることができます。
退職金をもらえない状況とは
退職金がもらえない状況は退職金制度があるかどうかや、勤続年数などの条件を満たしているかが大きく関係しています。
退職金制度は東京都産業労働局の労働相談情報センターの情報によると7割ほどの会社が退職金制度を採用しています。逆に3割は退職金制度がないので、そういった会社に勤めているといくら退職金を請求しても絶対にもらえません。
また退職金を渡す勤続年数に関しても、東京都産業労働局によると半数ほどの会社が3年以上と定めています。
このように退職金がもらえない場合は、その会社の退職金に関するルール次第です。そのため入社前に退職金制度について確認しておきましょう。
すでに会社に勤めていて現在の会社の退職金制度について知りたい人は、就業規則を確認すると記載しています。もし記載されていなかったら、その会社には退職金制度がないので残念ながら退職金はもらえないです。
退職金がもらえない時の請求方法をパターン別に紹介
会社に退職金制度がある場合、どんなに会社との仲が険悪でも退職金を支払うのがルールです。そのため会社に退職金を請求できるのですが、退職の仕方によって請求方法が異なります。
会社都合による退職
リストラや解雇などの退職や定年退職による退職は会社都合の退職です。これらの場合は基本的には何も言わずとも退職金を送ってくるものですが、まれに退職金請求に関する書類の提出を求めてくる場合があります。
そのため退職をする際に退職金について確認しておくと、たいていの場合もらえないということにはなりません。
自己都合による退職
家庭の事情や転職などは自己都合の退職です。自己都合退職の場合は円満に退職したかどうかで対応が変わって来ます。
円満退職できた場合は先ほど説明した会社都合による退職と同じように、退職前に退職金について相談しておくと大丈夫です。
しかし欠勤を繰り返した上で退職した場合やいきなり退職した場合は、会社との仲が険悪になるため退職金をもらえない可能性があります。いくらルールで退職金制度があるとはいえ、実際に退職金を出すのは人であるため、感情を考慮すると渡したくないと思うのも仕方ありません。
このような場合は退職金の請求書類を会社に送付する必要がありますが、悪質な企業だと無視されてもらえないです。そんな時は後ほど解説する請求方法を参考にしてください。
懲戒解雇による退職
長期の無断欠勤や犯罪行為を働いて退職させられるのが懲戒解雇に当たります。
懲戒解雇の場合は就業規則上、退職金をもらえるのかどうか確認が必要です。就業規則に「
懲戒解雇の場合退職金を支払わない」などの一文が無ければ退職金を請求できます。その時は会社に請求書を送れば大丈夫です。
逆に就業規則に懲戒解雇に関する記述があれば退職金はもらえないのかというと、絶対にもらえないということはありません。裁判では余程悪質なことをしたことによる懲戒解雇でない限り、退職金はもらえるとあるため諦めるのは早いです。とはいえ、それを自分で判断できないでしょうから弁護士に相談する必要があります。
退職金制度があるのにもらえない時に請求する6つの方法
会社に退職金制度があって、会社に請求したのにもかかわらず退職金をもらえない場合は、これから紹介する方法を実践すると回収できるので参考にしてください。
退職金をもらうための準備
退職金は法律で定められているわけではないため、退職金をもらうためには証拠を集める必要があります。
まずは会社に退職金制度があるか、退職金が慣例的に支払われているかを調べましょう。退職金については就業規則か退職金規定、労働契約書のいずれかに記入してあります。
続いて退職金制度の要件を満たしているか確認しましょう。これに関しては証拠になるものが必要なため、過去の給料明細や年金の支払い履歴などを準備する必要があります。
ここまで来ると会社に退職金を請求できるため、まずは電話で退職金について相談してみます。この段階で退職金を渡すと言えば終了ですが、それでも渡さない・了承したのにいつまでも送られてこない場合には次の段階に移行しましょう。
内容証明郵便で退職金を請求
退職金請求について書かれている書類を自筆して、会社に内容証明郵便で送りつけます。
内容証明郵便とは文章の内容や送った日付、誰から誰当てに送ったかを郵便局が証明してくれるというものです。内容証明郵便で送ることで、会社は退職金請求書を受け取っていないとは言えません。
退職金の請求は最終的に裁判にまで行きつくので、そこで優位に立つためにも内容証明郵便は必須です。
行政機関に相談
請求書を送付しても何の音沙汰もなければ、続いて労働局の総合労働相談コーナーや労働基準監督署などの行政機関に相談します。
行政機関には最初に用意した証拠品を持って行き、それが認められると行政機関から会社に退職金の請求をしてくれます。場合によっては会社への立入検査までしてくれるため、この段階で大体の場合は退職金を払ってくれるでしょう。
裁判外紛争解決手続 (ADR)を利用
行政機関が退職金を請求したのにそれでも断ってきたら、裁判外紛争解決手続 (ADR)を利用します。ADRは法律や役務取引の専門家が退職金の未払いに対応してくれるというものです。
ADRは国民生活センター紛争解決委員会が行ってくれますが、こういった期間への手続きは行政機関がしてくれるので、ADRは行政機関に相談してから利用するようにしましょう。
少額訴訟
ADRでも無理なら最終手段として裁判となりますが、退職金が60万円以下なら簡易裁判所に訴えます。メリットとしては申立費用が安く、即日解決が見込めることです。
ただ即日で判決を下すため、より多くの証拠が必要になります。
弁護士に相談
行政機関やADRが無理で、少額訴訟も無理なら弁護士に相談しましょう。弁護士に退職金をもらえないことを証明して認められると、弁護士自ら会社に赴いて話し合いをしてくれます。
きちんと証拠品さえ示せればこの段階で退職金はもらえるので安心してください。
また退職金の未払いに関する手順を紹介してきましたが、面倒ならいきなり弁護士に相談しても大丈夫です。
ただ弁護士に相談すると料金が発生します。一般的に初回なら5千円から1万円です。また裁判まで行く場合には着手金として10万円から30万円必要となります。
その他もろもろ料金が発生するためどの弁護士に相談するかが大事です。また料金も大事ですが実績も判断基準の中に入れましょう。特に労働問題を取り扱っている弁護士にするのがベストです。
まとめ
退職金がもらえない場合は会社が退職金制度を採用していない、条件を満たしていない可能性があります。この場合はいくら退職金を請求してももらえないため注意しておきましょう。これらの情報は就業規則に記載してあります。
しかし退職金制度があって、条件も満たしているのに退職金がもらえないときは、条件を満たしていると証明できる書類を用意しましょう。その上で会社に連絡すると健全な会社ならもらえます。
ただ頑なに退職金の支払いを断ってくる場合があるのでその時は、一つずつ退職金をもらえる手順を踏んでいくと解決するでしょう。また最終手段として弁護士に相談するのも良いです。
いずれかの対処をすると正しい証拠さえあれば退職金をもらえるので、最後まで諦めずに退職金をゲットしましょう。