退職をする時には会社によって誓約書の記入が必要なこともあるでしょう。しかし誓約書の内容で一番多いのは同業他社で働くことを禁止するもので、これから転職する身としては足枷でしかないです。
そのため誓約書を無視したいという人も多いと思われます。
そこで退職時に書かされる誓約書を違反するとどうなるのか紹介していきます。いざという時のためにも誓約書のルールについて知っておいてください。
退職時に必ず誓約書にサインしないといけないのか
退職時に誓約書へサインすることは義務ではないため、必ず記入しないといけないということは絶対にありません。つまりいくら会社側から催促されても断る権利があるということです。
一般的に会社から誓約書についてのサインを求めますが、これは双方合意の上でしか成り立ちません。そのため従業員が断れば誓約書にサインしなくても法律上問題ないです。
さらに労働者にとって、極端に不利なことが書かれていると法的にも効力を発揮しないです。特に残業代の請求を放棄させるようなものは法律でも禁止されています。
誓約書と似た名前の契約書とは
契約書とは主に入社時に記入するもので雇用契約書とも呼ばれています。
雇用契約書には就業場所や労働契約の期間、始業時間と就業時間などその会社の仕事に関する情報が記載されているので、きちんと確認してからサインしましょう。
退職時に合意した誓約書を違反するとどうなるのか
法的効力がないものに関しては、違反しても損害賠償を請求されることはありません。また法的効力がある場合でも、双方が合意していないと違反しても問題にはならないです。
逆に法的効力がある誓約書を違反してしまうと損害賠償を請求されることがあります。
そのためサインをする時には誓約書の内容を理解することと、法的効力の有無を確認しておくと安全です。
退職時にサインする誓約書の中で法的効力がある内容
まず法的効力があるものから紹介していきます。誓約書にこれらの内容が記載されていてサインしてしまうと、違反した時に損害賠償を請求されるので気を付けてください。
秘密保持
秘密保持というのはその会社に関する極秘の情報です。そのため他社に持ち出すとその会社の情報が外部に漏れてしまいます。そうすると会社の知的財産権が侵害されるため大きな損害賠償を請求される可能性が高いです。
また秘密保持に関しては違反した時に、無効とされるケースがあまりありません。そのため特にその会社の秘密を守ることには気を付けておきましょう。
服務規程の遵守
服務規定とはその会社で働くにあたり、最低限守らなければならないルールのことです。
服務規程が守られていないと秩序が乱れ会社が正常に稼働しないため、誓約書で守らせることができます。
また服務規程には就業規則の内容を遵守させることもできるため、就業規則に書かれていることを破るのも損害賠償の対象です。例えば就業規則に退職を伝えてから1か月で退職可能と記載されているのに、1週間で勝手に退職してしまうと違反となります。
このように就業規則の内容にも及ぶことがあるため、誓約書と同時に就業規則も見ておきたいです。
会社への個人情報の提出
契約をする上で個人情報は必要なため、提出することを誓約書に載せることができます。そのため個人情報の提出を拒むと雇ってもらえません。
もし個人情報を悪用するような会社なら危険なため、事前にホームページなどで会社の正当性を確認しておきましょう。
競合他社への転職
同業他社に転職することは記載できますが法的効力を持たないケースが多いです。ただその会社で10年など長期的に勤めている場合には、法的効力を持つこともあります。
一つの会社に長いこと勤めていると、知らない間にその会社独自の技術を身に付けているものです。その技術を他社に持ち込むことで、一方の会社の売上が落ちるので、それを防止するために誓約書に記載することができます。
ただ法律的にも職業の自由が認められているため、長期間その会社に勤めている場合のみです。
退職時にサインする誓約書の中で効力がない内容
続いて以下に記しているものが記載されていて、違反したとしても無効になることが多いです。ただ中にはグレーなものもあるので絶対ではありません。
損害賠償の請求
会社は悪質なことをしていない従業員に対して損害賠償を請求することはできません。そのため記載されていて、それを破ったとしても無効となります。
例えばこのような場合は損害賠償を請求できません。
・遅刻したことによる罰金
・商品が売れ残ったら自腹で支払い
・過失で価格的に軽度なモノを破損させた時の弁償
こういった内容は無効になりますが、故意にモノを破壊した場合は損害賠償の対象になってしまいます。
残業を必ずさせるように決める
残業は服務規程の一部なので遵守しないといけない内容ですが、休日出勤を強要するなど無理やり従わせるようなことはできません。
また残業代を請求することを禁止することもできないです。悪質な会社だと残業代を払わないこともありますが、誓約書で禁止されていても法的効力はないため、最悪の場合弁護士に相談すると回収できます。
解雇に関する情報
従業員を解雇するにはこのような条件でしかできません。
・会社の経営不振
・従業員の勤務態度が悪い
・実力不足
このような条件がありますが、さらにここから厳選な審査を通してやっと解雇できます。例えばその従業員がいることで業績が悪化していることを証明できるデータがあるなどです。
そのため誓約書で大きな失敗をしたら退職とすると記載されていても無効となる場合が多いです。
同業他社への転職
先ほども言いましたが同業他社への転職を禁止していて、それを違反しても無効となる場合が多いです。特に入社しても間もない人はほぼ確実に無効となります。
退職時の誓約書に記載されやすい競業避止業義務について詳しく解説
先ほどから解説している同業他社への転職についてですが、内容がぼんやりしているため分かりづらいでしょう。そこで4つの状況ごとに詳しく解説していきます。
同業他社への転職を禁ずる期間
誓約書には退職後より数年間同業他社への転職を禁ずるというものが多いです。例えば3年以内なら法的効力を持つこともあります。
しかし同業他社への転職を何十年も禁じている場合や、誓約書に期間の制限が書かれていない場合は法的効力を持ちません。これは労働者の職業選択の自由を大きく侵害するからです。
同業他社への転職を禁ずる場所
誓約書の中には同業他社への範囲を指定しているものもあります。その会社の近くだと法的効力を持ってしまうことも多いです。
逆にその会社とは違う都道府県や、あまりにも広範囲で指定している時は無効となります。そのため場所的制限が広範囲に及ぶ場合は従う必要はありません。
同業他社への転職を禁ずる職種
同業他社への転職でも職種という面で見た時に、どこまでが許容されるかが問題点です。ただこの場合は法的効力を持たない場合が多いです。
例えば技術職から技術職に転職しても問題ありません。これは職業選択の自由が大きく損なられるから無効とされます。
その人の会社上の地位
会社が同業他社への転職を禁止する一番の理由はライバル会社に抜かれる可能性を恐れているからです。そのため会社に勤めている年数が長ければ長いほど法的効力を持ってきます。
逆に入社してから間もないと問題にはなりません。
退職時の誓約書でトラブルにならないためにも
誓約書は何かと面倒なことも多く、知らずにサインしてしまうと、後々トラブルになることもあります。そのため誓約書の内容をきちんと確認しましょう。
もし誓約書に不当なことが書かれていても、法的に効力がなければトラブルにはなりませんが絶対とは言えません。特に同業他社への転職は微妙なラインになることが多いです。
そのため誓約書に気になる部分があれば上司に確認して、取り消さないようならサインしないようにしましょう。会社は誓約書の同意を求めることができますが、決して強制的なものではないです。
しかし会社側がしつこくてどうしても断れず、サインしてしまうこともあるでしょう。そしてすでに誓約書の内容を破ってしまい、トラブルになっている人もいるかもしれません。そんな人は弁護士に相談しましょう。
誓約書の内容が労働者にとって極端に不利なものだと弁護士が判断したら無効とすることができます。
また弁護士に相談すると残業代の未払い問題も解決してくれるため、心当たりのある人はついでに相談しましょう。
代償措置には注意
退職時の誓約書にサインすることを断っていると会社側が譲歩して、代償措置を仕掛けてくることもあります。例えば代償措置の一つとしてよくあるのが退職金の積み増しです。
退職金がより多くもらえるからといって了承してしまうと、誓約書でトラブルになることも考えられるので止めておいた方が良いです。
またその後の上司とのやりとりも険悪になるため円満に退職することはできません。
このように代償措置で誓約書への同意を求めてくることもありますが断っておくのが無難です。
まとめ
退職時に誓約書へのサインを求める会社は多いですが、決して強制的なものではありません。そのため内容を確認して不利なことが書かれていると断ることができます。
しかし悪質な会社は誓約書へのサインを強要してくることもあるでしょう。何回も断っているのにしつこい場合は弁護士に相談しましょう。
そして誓約書を確認して問題なければサインしても構いません。例えば別業種への転職なら問題はないです。
また誓約書にあることを違反してしまうと損害賠償を請求されるものとそうでないものがあります。
このように退職時に求められる誓約書はサインしない方が安全です。