働く人を支える、雇用保険について詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。バイト先によっては、面接時に詳しく説明してくれることもあります。しかし大抵の場合は、加入について触れる程度なため「よくわからないけど保険料を支払っている」人は多いでしょう。
雇用保険に加入していると、困った時に保証してもらえるので、知っておいて損はありません。もしもの時に慌てないよう、事前に確認しておくことも大切です。
そこで今回は、わかりづらい雇用保険について、加入条件から手当を受け取れるタイミング、給付金の受け取り方法まで徹底的に解説。「アルバイトだけどもしもの時のために保険について知っておきたい」という人は必見です。
雇用保険はバイトでも入れる?
雇用保険は、正社員だけのものと考えがちですが、そんなことはありません。詳しくは後述しますが、アルバイトやパートなどの非正規雇用者でも、条件さえ満たしていれば加入することができます。
保証内容についても正社員と違いはないので、安心してください。
雇用保険とは?
雇用保険とは、いざという時に労働者を保証するための保険です。労災保険と同様に、加入が義務付けられており、条件が揃っているアルバイトには雇用主が加入手続きを行う必要があります。
労災保険は就労中の事故や怪我に対して保証されるものですが、雇用保険は失業や育児・介護による休業を余儀なくされた場合など、働けない状況に陥ってしまった際に生活を保証してくれるものです。
失業手当と聞くと、正社員のためにあるものと感じるかもしれません。しかし、アルバイトやパートであっても、失業することで金銭的な困窮に陥り生活が行き詰まるのは同じこと。条件が揃っていれば、受け取る権利があります。
同様に介護や育児で仕事ができず、収入がなくなってしまう場合も、条件を満たしていれば手当を受け取ることが可能です。
バイトでも入れる雇用保険の保険料は?
加入の際に気になるのが保険料でしょう。アルバイトやパートは時給で働いていることが多いので、1ヶ月に受け取れる給料には限界があります。その中から支払うのは大変ですし、ましてや保険料が高いのは死活問題なはずです。
雇用保険の保険料は、支給される給料の0.9%と定められています。ただ全額を自己負担で支払うのではありません。雇用主と折半(雇用主0.6%負担)なので、月々の保険料は給料の0.3%。計算式は以下になります。
自分が受け取る予定の月給×0.3%=月々支払う保険料
毎月15万のお給料を受け取っていると仮定すると、15万円に0.3%をかけて、月々支払うのは450円です。これは一例ですが、基本的にアルバイトやパートが支払う保険料は数百円程度で収まることが多いので、安心してください。
バイトで雇用保険に加入する場合の条件
雇用保険には、加入できる人の「条件」があります。以下の条件を満たしていれば、加入は義務ですが、反対に満たしていなければ雇用保険に加入することはできません。
週20時間以上労働している
週に20時間以上シフトに入っていなければ、雇用保険への加入はできません。
たとえば、週4日で5時間の固定シフトで働いている場合、合計勤務時間が20時間なので加入可能。あくまで合計労働時間なので、必ずしもこのシフトでなければならないということではありませんが、参考にしてみてください。
また固定シフトでなく、その週によってシフトが違う場合は、月間で87時間超えるかで判断されます。月の前半はフルタイムで出勤しているが、後半からはほとんどシフトに入っていない場合でも、月間労働時間が87時間を超えていれば雇用保険に加入することができるでしょう。
31日間以上雇用され続ける
雇用保険に加入するためには、同じバイト先に31日間(約1ヶ月)雇用され続ける必要があります。そのため、1日だけの短期アルバイトなどでは、雇用保険への加入は認められません。
ここでの期間は、最初に仕事をした日(アルバイト初日)から数えて31日間です。「勤務する予定」で構わないので、1ヶ月以上の雇用契約なら加入することができます。
学生以外
学生は、原則雇用保険への加入は認められていません。基本的に親の扶養下にあるとされているので、失業や育児・介護などが原因で仕事ができなくなり、生活が行き詰まる可能性は低いと考えられるためです。
ただし、定時制や通信制の学校に通っている場合は、加入対象として認められます。働きながら学生をしている人でも雇用保険には加入できるので、安心してください。
バイトで加入した雇用保険でもらえる手当は?
いざという時に働く人を守ってくれる雇用保険。失業や介護・育児などで仕事ができなくなっても、手当を受け取ることで最低限の生活を送ることができます。
たとえひと月あたり数百円の保険料だったとしても、チリも積もれば山。支払った保険料を無駄にしないためにも手当の内容について事前に知っておくことは大切です。
雇用保険被保険者がさまざまな場面で受け取ることができる手当について見ておきましょう。
失業手当
失業手当を受給するためには、以下の条件を満たしている必要があります。
・再就職を志していること(働く意思がある)
・一定の期間雇用保険に加入していること
自己都合退職(の場合:退職前の2年間に雇用保険への加入期間が1年間あること
会社都合退職(の場合:退職前の1年間に雇用保険への加入期間が6ヶ月間あること
失業手当は、会社都合または自己都合によって退職をした人のために、支給される手当のことです。これは、退職したことによる金銭的困窮を避け、最低限の生活を保証するためのもの。そのため、働く意思がない人は受給することができません。
就職促進給付
就職促進給付は、失業手当を受け取っている人が、再就職をした際に受け取れる手当のこと。
すべての手当をご紹介すると脱線するのでここでは割愛しますが、たとえば失業手当を受け取っている人がアルバイトやパートとして再就職すると「就業手当」、正社員として再就職すると「再就職手当」を受け取ることができます。
教育訓練給付金
一定の条件を満たしている雇用保険被保険者が、厚労省が指定している教育訓練講座を自費で受給した場合、受け取ることができるのがこの「教育訓練給付金」です。
指定講座には、ケアマネージャー講座やPMP資格取得講座などがあります。講座によって受講料や取得完了までの必要期間はさまざま。受講対象の講座は厚生労働省のホームページに掲載されているので、チェックしてみてください。
また教育訓練講座は、離職者が再就職のために通う職業訓練と異なり、仕事をしながらでも受講可能です。スキルアップに利用できる講座があれば、チャレンジしてみてもよいでしょう。
雇用継続給付
雇用継続給付は、介護や育児などでやむを得ず休業をしなければならなくなった場合に利用できる制度です。雇用の継続を維持・促進するためのもので、「育児休業給付」と「介護休業給付」にわかれます。
育児休業給付
育児休業給付は、2歳未満の乳幼児を育児しており、託児所や保育所に預けられないためアルバイトやパートを休業しているというケースで利用できる制度です。
子供が2歳になるまで手当を受け取ることができます。
介護休業給付
介護休業給付を受け取るためには以下のどちらかの条件を満たしていなければなりません。
①負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により2週間以上にわたり常時介護がを必要とする状態にある家族を介護するための休業であること。
②被保険者がその期間の初日および末日とする日を明らかにして事業主に申し出を行い、これによって被保険者が実際に取得した休業であること。
つまり、家族に2週間以上介護をしなければ生活できない人がいる場合、もしくは雇用主(店長や責任者)へ「〇月〇日〜〇月〇日の間介護するので休業させてください」と申し出て、実際に休業した場合のどちらかに当てはまれば給付金を受け取れるということ。
そして上記の条件を満たしていれば、93日間を限度に最大3度まで給付金を受け取ることができます。
雇用保険(バイト)の給付金受け取り方法
雇用保険の給付金や失業手当は、給料のように自動で振り込まれるわけではありません。手当を受けるためには、自分で申請の手続きを行う必要があるので注意しておきましょう。ここでは、失業手当の受け取りについてご紹介します。
手当を受け取る際は、まずハローワークで失業保険の申し込みを行います。その後定められている期間(待機時間7日間)が経過したら、再びハローワークにて「雇用保険受給者初回説明会」を受講しましょう。
このような手順をふめば、失業手当が毎月指定口座に振り込まれます。なお、月に1度ハローワークへ出向き、失業状態に変化がないことを証明する必要があるので忘れないようにしましょう。
まとめ
雇用保険はアルバイトやパートなどの非正規雇用でも、条件を満たしていれば加入しなければなりません。しかし保証内容が複雑なことから、面接時や加入時に責任者から説明を受けることはないケースがほとんど。
詳しく知らないまま、毎月保険料を支払っているという方も多いのではないでしょうか。
しかし、保険料を支払っているのですから、困った時はしっかり活用するべきです。もし失業して生活に困窮しているのなら、申請を検討してみてください。また、現在は就労していたとしても、生活スタイルが変わり休業することもあるかもしれません。
困った時に給付金や手当を受け取るためにも知っておくことが大切。何かあった時はこの記事を思い出して、手続きを行ってみてください。