アルバイトであれば「退職したい」と伝えるだけで希望日に辞めることができますが、正社員が退職する場合は正式な手続きが必要です。正社員として退職した経験があれば悩むことはありませんが、はじめての退職であれば流れについても不慣れな点が多いでしょう。
また会社という組織から抜けるということもあり、事務手続きだけでなく人間関係の面でも行っておくことがたくさんあります。円滑に退職するためにも、退職までの流れと必要な手続きについて事前に確認しておくことが大切。
この記事では、はじめて退職する人へ向けて詳しい流れと必要な手続きなどを徹底的に解説します。読むだけで退職について詳しくなれるので、これから退職する予定がある方は参考にしてみてください。
退職までの流れ
まずは退職までの一般的な流れについて見ておきましょう。
正社員というのはさまざまな点で守られている反面、なにか行動を起こす際には正式な手続きが必要になるもの。退職もそのひとつで、「辞めたい」と伝えるだけでは退職できません。正社員が円滑退職するために大切なのは、正式な段階をふんで手続きをすることです。
この流れに沿って退職することで、会社や社内の人間とトラブルを起こすことなく、退職することができます。
1.退職の相談と退職日の調整
退職の意思をしっかりと固めたら、直属の上司へ面談のアポイントメントを取りましょう。口頭での伝達はもちろん、メールやライン、電話で取っても構いません。
面談では、退職の意思の報告と退職願の提出を行います。退職願は企業によって必須とされていない場合も多いですが、「退職の意思を報告した」という記録を残すためにも提出しておくと安心。
退職日に関してはこちらの希望が必ずしも通るとは限りません。繁盛期であったり、進行中のプロジェクトがあれば引き止められる可能性も十分にあります。後日トラブルにならないように、この時点で上司と意見をすり合わせておきましょう。
2.退職届の提出
面談後、退職願が受理され上司から納得してもらえたら後日退職届を提出します。法律上では口頭での報告でも構わないとされていますが、正式に退職をするための書類として提出を義務化している会社も珍しくありません。
また企業によっては「退職日の何日前に提出する」という規則を設けていることもあります。この辺りの対応は勤めている会社によっても異なるので、臨機応変に対応してください。
3.業務の引き継ぎ
どのような業種であっても正社員であれば引き継ぎが必要な場合がほとんど。引き継ぎはこれまで自分が請け負ってきた業務を後任に託すための大切な任務です。現在の会社で行う最後の業務でもあるので、綿密なスケジュールをたてて完璧にこなしましょう。退職日までに間に合わないなんてことは絶対ないように。
退職までの期間で有休消化をする場合もあるので、その期間も念頭におきつつ余裕を持ったスケジュールで作業するのが大切。自分がいなくなるという点を忘れず、説明がなくてもわかるように記録しておくのがコツです。
4.取引先へのあいさつ回り
取引先との付き合いがある業種であれば、社外へのあいさつも忘れずに行っておきましょう。
営業職など取引先との関わりが密な場合は、特に力を入れたいところです。取引先側から見ても担当が変わってから事後報告されるのと、あいさつされてから担当が変わるのは印象が違うもの。後任を紹介するのも仕事のうちと捉え、担当している企業は全て訪問しておきます。
5.最終日には社内あいさつと備品の返却を
退職日にはお世話になった社内の人へあいさつをしてから退社します。
支給されている機器や備品などがあれば、忘れずに返却しましょう。取引先から受け取った名刺をどうするかなども事前に聞いておいてください。
【退職までの流れ】退職に必要な手続きとは?
正社員であれば、退職をする場合も手続きが必要です。退職までに必要な手続きについてまとめているので、退職日までに確認しておきましょう。
退職届提出
そもそも「退職願」と「退職届」は全く異なるものです。退職願を提出したら退職届は必要ないのでは?と考えるかもしれませんが、どちらかといえば「退職届」の方が重要な意味を持つ書類とされています。
退職届は「退職が決まった報告」のようなものであり、提出すると取り下げるのは困難。退職届を提出した後で気持ちが揺らがないように、辞意を固めてから提出してください。あくまでもビジネス上の書類と捉え、封筒に入れて提出することを忘れずに。
提出時期は退職日の2ヶ月前が一般的ですが、会社の規則があればそれに従うようにします。もし「退職届は退職日の1ヶ月前に提出する」といった規定があれば、1ヶ月前に提出しましょう。
備品返却・書類受け取り
退職するまでに返却しなければならないものと、こちらで廃棄してよいものなども確認しておきます。会社によっても異なりますが、以下のようなものは返却対象になっている場合が多いです。
・健康保険証
・制服
・社員証
・名刺
・ノートパソコン、タブレットなどの電子機器や周辺機器
・経費で購入した書籍や物など
返却するものは勤務最終日まで業務で使用することも多いので、チェックリストとしてあげておき退職日に返却するといった形をとります。制服など身に付けるものはクリーニング後返却となっている場合もあるので、この辺りも忘れずに尋ねておきましょう。
一方で、事前に確認・請求しておかなければならない書類もあります。主に手渡しで返却してもらいますが、会社によっては郵送で返却ということもあるので請求手続きが必要か上司に確認しておくと安心です。
・雇用保険被保険者証
・年金手帳
・源泉徴収票
・離職票
転職先の企業から雇用保険被保険者証の提出を求められたり、失業保険を受ける際には離職票が必要になったりするので、後々困らないよう事前の手配を忘れないようにしてください。
【退職までの流れ】退職日までに準備しておくこと
退職の際は、公的な書類の準備以外にもやらなければならないことがあります。退職日になって慌てないよう、事前に準備しておきましょう。
引き継ぎ資料を製作する
正社員が退職するとなれば、引き継ぎは必須です。自分が請け負っていた業務の種類が多ければより大変なので、引き継ぎノートなどを作ってわかりやすくまとめておくことが大切。後任が決まっている場合でも、教えながらノートに記しておけば相手の負担が軽減します。
ただし、引き継ぎに関する会社規定のマニュアルがあるならそれに従うようにしましょう。
雇用保険被保険者証の確認
雇用保険被保険者証とは、雇用保険に加入していることを証明するための書類です。基本的には会社が管理しているものなので、見たことがないかもしれません。しかし転職をする場合は必ず提出しなければならない書類なため、忘れずに受け取っておきましょう。
年金手帳の確認
年金手帳は会社が厚生年金の手続きをするために預かるもので、入社時以外には必要とされません。しかし会社によっては本人へ返却せず、そのまま会社で保管されることもあります。年金手帳が手元にない場合は会社が預かっている可能性が高いので、退職日までに返却を求めましょう。
【退職までの流れ】退職日に行うこと
ここまでは退職日までに行っておくことを解説しましたが、ここでは退職日当日に行うことをリストアップしています。再度来社する状況にならないよう、忘れものには気をつけてください。
デスク周りの整理・清掃
「立つ鳥跡を濁さず」ということわざがあるように、最後に身の回りの整理をしてから退社しましょう。デスクの拭き掃除も忘れずに。不要なものが出てきたら自分で廃棄します。次に使う人のためにも私物を残してはいけません。
新品ほどとは言いませんが、できるだけ綺麗な状態で受け渡すのがマナー。小さなことだと感じますが、このような些細なところを丁寧に行うのが円滑退職のカギです。
返却物を会社から受け取る
最終日に忘れものをすると再度取りに来るのは大変です。返却物は全て返したか、受け取り書類の抜けはないかをチェックしてから退社します。もし足りていなければ、すぐに受け取れるか、郵送で送ってもらえるかを尋ねておきましょう。
備品などを会社へ返却する
ノートパソコンやタブレットなど電子機器はもちろん、社員証や保険証など会社のものを持ち帰らないようにしてください。特に小さなものやいつも身につけているものは忘れがちなので、注意しておくとよいでしょう。
書類などは社内機密でもあるので、持ち出さないように気をつける必要があります。
社内の人へ退職のあいさつをする
最後はお世話になった社内の人へ忘れずにあいさつをして退社します。同じ部署の人には全員にあいさつするのがマナー。丁寧に行っておけば、円滑に送り出してもらえるはずです。
【退職までの流れ】退職後の公的手続きも忘れずに
退職後は、転職する人・休暇を取る人・フリーランスに転身する人など進む道はさまざまです。すぐに転職する場合は転職先の企業が公的な手続きを請け負ってくれますが、そうでなければ自分で手続きを行わなければなりません。
転職までの期間に失業手当を受け取るのであれば、ハローワークへ出向き手続きを行う必要があります。ほかにも年金や税金、健康保険などこれまで会社が行っていた手続きを自分でしなければなりません。
自分の状況に合わせて公的な手続きをきちんと行っておきましょう。
まとめ
正社員はアルバイトと違い、退職までに行わなければならない手続きが多くあります。提出する書類を作成したり、引き継ぎを完璧にしなければならなかったりと大変なことも多いでしょう。しかしひとつひとつを丁寧に行うことこそが、円滑退職のカギでもあります。
退職届を提出してからも確認する点や手続きなど必要なので、引き継ぎ業務と同時進行できるようにタスクノートを作っておくとよいでしょう。