退職するときに行う必要があるのは、「退職願」や「退職届」の提出だけではありません。退職後スムーズに手続きを進めるために、受け取っておかなければならない書類というものが存在します。
このような書類は通常の企業であれば、退職日までもしくは退職後すぐに発行されるもの。しかし「いつまで待っても対応してもらえない」というケースも実際に見受けられます。
本記事では、必要な書類をもらえていない人に向けて対処法をご紹介。トラブルになって困っている人は、参考にしてみてください。
退職時の書類がもらえない理由とは?
そもそも退職時の書類がなぜ発行されないのでしょうか。主な原因は以下の3つ。まずは現状がどれに当てはまるかを確認してみてください。
会社が忘れている
まずあげられるのが、会社が発行を忘れてしまっているケース。大きな会社であればそういったことは少ないですが、個人経営であったり中小企業だとまれに起こり得る事態です。
また離職票など会社側が保管している書類でなければ、発行元が忙しくて遅れている可能性も考えられるでしょう。他の書類であっても郵送で2週間ほどかかるので、到着していないだけという場合もあります。まだ退職日が過ぎていないのであれば、もう少し待ってみてください。退職日付近になっても送付されてこなければ会社に連絡して確認を行なってみましょう。
申告していない
離職票が届かないことで悩んでいるのであれば、事前に申告したか思い出してみましょう。会社によっても異なりますが、自分から申し出なければ発行手続きを行わない場合もあります。
嫌がらせ
全体的に見ると少ないケースですが、ブラック企業だったりワンマン経営者と退職についてのトラブルを起こしてしまっていたりすると、嫌がらせで送付されてこない可能性もあります。
そもそも発行・返却を行わないのは雇用保険法を違反している違法行為ですが、実際に訴えられるケースが少ないからか、横行してしまっているのが現実。嫌がらせで送付されてこないのであれば、残念ながら会社に問い合わせても対応してもらえない可能性が高いでしょう。
後述する方法で対処するようにしてください。
会社からもらえない?退職時に必要な書類とは?
退職後の手続きで困らないよう、まずは退職時に受け取りが必要な書類を確認しておきましょう。退職後の進路によっては必要がない書類もあるので、そちらも合わせて説明します。
雇用保険被保険者離職票
雇用保険被保険者離職票とは、雇用保険に加入している労働者が退職時に発行してもらう離職証明書のようなものです。これは退職後に失業手当の受給を申請する人がハローワークに提出する書類であり、以下の場合は必要ありません。
・失業手当の受給条件を満たしていない人
・退職後の転職先がすでに決まっている人
必要がない人がいることから、会社側が必ず発行する義務はなく、申告しておかなければ受け取れない可能性も。必要であれば事前に申請しておきましょう。
離職票は一般的に郵送で自宅へ送られます。手元に届くまでは2週間ほどかかるので、問い合わせは退職日の近日まで待ちましょう。
給与所得の源泉徴収票
源泉徴収票とは、過去1年間の間に受け取った給与額や徴収された所得税の金額が記されている書類です。一般的に年末調整の際必要とされるため、転職先から提出を指示されるでしょう。所得税の正しい計算のためには必要な書類なので、用意しておく必要があります。
源泉徴収票は会社側が発行しなければならない書類のひとつ。義務化されているので必ず送付されてくるはずです。ただしほかの書類と異なり、手元に届くまで1ヶ月ほどかかるため注意しておきましょう。
健康保険資格喪失証明書
正社員であれば必ず社会保険に加入しているでしょう。健康保険資格喪失証明証は、退職をすることで社会保険から抜けたという証明書のようなもの。健康保険の多重加入を避けるために必要です。
そして転職する際や国民健康保険の加入のためにも必要な書類なので、確認しておいてください。こちらも郵送で送付され、手元に届くまで2週間ほどかかります。
雇用保険被保険者証
雇用保険に加入しているのであれば、雇用保険被保険者証も返却してもらう必要があります。基本的に会社が保管している書類であり、申請しなくても返却される書類です。
こちらも転職先から請求されるほか、失業手当を受ける際にも必要。郵送で送付され、2週間ほどで手元に届きます。
年金手帳
年金手帳は、厚生年金に加入するため入社時に提出する書類です。しかしその後返却されるか、そのまま会社が保管を続けるかは方針によっても異なるのが実情。年金手帳は年金を受け取る資格があるかどうかを見極める証明のようなものです。大切な書類なので、必ず返却されるでしょう。
年金手帳も郵送で自宅へ送付され、手元に届くまで2週間ほどかかるとされています。転職先の就業開始日までの間に1日でも空白があれば、手続きを行わなければならないため退職日までに受け取れるよう調整しておきましょう。
退職時に必要な書類がもらえない場合の対処法
もしも必要書類の抜けがあったり、一切送付されてこない状況なら一先ず会社へ連絡を入れてみましょう。意図的に送付していないのではなく、ミスで発送されていないこともあるので、まずは確認のつもりで尋ねてみてください。
それでも発行・返却してもらえなければ、以下の施設へ行くことで再発行が可能です。
ハローワークで発行してもらう
ハローワークで発行してもらえるのは、以下の2点です。
・離職票
・雇用保険被保険者証
ただ2月〜3月や8月〜9月は転職・就職活動をしている人が多く、ハローワークは所謂繁盛期。期限がある手続きの場合は時間に余裕を持って行きましょう。
年金事務所で発行してもらう
年金事務所で再発行手続きができるのは以下の2点です。
・健康保険資格喪失証明証
・年金手帳
健康保険資格喪失証明証は、市役所でも再発行してもらうことができます。自分の住んでいる地域から近い方へ出向くとよいでしょう。
年金手帳の再発行には身分証明証が必要なので、忘れずに持参するようにしてください。
税務署で発行してもらう
源泉徴収票が送付されてこなければ、近隣の税務署で再発行手続きを行ってください。普段税務署に行く機会はあまり多くないと思いますが、市役所同様窓口にて「源泉徴収票の再発行手続きをお願いします」と伝えれば、対応してもらえます。
そもそも書類の提出が必要ない場合もある
上記でも触れましたが、離職票だけは必要ないケースもあります。離職票が必要になるのは、以下の場合のみです。
・雇用保険に加入していて尚且つ失業手当の受給条件を満たしている
・失業手当を受け取りながら転職活動を行う
・失業手当を受け取りながら休暇を過ごす
・失業手当を受け取りながら職業訓練校に通う
失業保険の受給条件は以下の2点です。
①基本=退職日までの2年間で11日以上雇用保険に加入していた月が12ヶ月以上ある事
②特例=解雇等会社都合で退職した特定受給資格者と病気、ケガ、親族の介護、雇い止めなどで退職を余儀なくされた特定理由退職者の場合は退職日までの1年間で11日以上雇用保険に入っていた月が6ヶ月以上ある事
①の12ヶ月は、通算で計算されるのでひとつの会社での勤務期間が12ヶ月に満たなくても構いません。
失業手当を受けながら転職活動や職業訓練校に通って新しいことにチャレンジする予定の方は、必ず必要になる書類といえます。手続きは必要ですが受給しておけば生活に困ることはないので、めんどうくさがらず行っておきましょう。
ちなみに、失業手当は一定の給与所得がある人は受けられません。あくまでも失業中であり、その期間に再就職の活動を行うための手当です。
離職票は必要とされないケースもあるので、会社も必ず発行する義務はなく、申告制にしている場合も多いです。手続きを行う予定があるのであれば、事前に申請しておきましょう。
退職時に必要な書類をもらえないのは違法?
退職時に書類を渡さないこと自体が違法か?の答えは、「書類によって異なる」です。離職票は発行の義務がないので、発行しなくとも違法ではありません。ただしそれは申告していない場合の話であり、申告された上で発行をしなければ違法となります。
離職票以外の書類は全て会社側に返却・発行の義務があるため、渡さないこと自体が違法です。しかしそのことをそのまま税務署や年金事務所などで訴えると、事が大きくなってしまう可能性も。申請する際に理由を尋ねられた場合は「紛失したので」と答えておくのが無難です。
どうしても会社の対応に納得がいかないのであれば、弁護士もしくは労働基準監督署へ相談し、法的な手段を取りましょう。
まとめ
退職時に必要な書類は、離職票を除き全て会社が発行・返却をする義務があります。しかし一部の企業では、まともに返却を行わないこともあるのが実情です。このような事態に陥ってしまったら、まずは届くまでの期間をチェックしてみてください。
その上で会社に連絡をし、忘れていないかの確認を取りましょう。それでも発行してもらえない場合は公的な手続きを取ることで再発行してもらうことも可能なので安心してください。
退職時の書類がもらえないのは、非常に困ることです。しかし対処法はあるので、焦らず冷静に対処して期限内に必要な手続きを行いましょう。