引きこもりとニートは同じものと認識している人がほとんどかもしれません。しかし、引きこもりとニートには違いがあります。
そこで本記事では、引きこもりとニートの違いを厚生労働省が定める定義などを中心に紹介していきます。
引きこもりとニートの違いは?定義をまずは知ろう!
引きこもりとニートの違いや定義は、明確に共通しているものはありません。
厚生労働省でも引きこもりとニートの違いについて混同していた時期があったり、明確な線引きを行うのは、現在も難しいものとなっています。
そのため引きこもりとニートの違いは、おおよその定義として設けられている中で、一番の大きな違いは年齢です。
・引きこもりは、年齢制限なし
・ニートは、15歳~34歳
という定義がされています。
そのほかにも、
・引きこもりは、6ヶ月以上社会との関わりを持たない状態が続いていること
・ニートは1ヶ月単位で社会生活(仕事などに就かない)を行わないが、外出などは普通に行われる場合もあること
という風に違いを設けています。
引きこもりとはどういう状態?詳しく知ろう
引きこもりとは「6ヶ月以上社会と関わりを持たない状態」という「社会的ひきこもり」を斎藤環氏が定義したものが、20年以上前から現在まで用いられています。
引きこもりという言葉はよく耳にしますが、実際にどういう状態のことを言うのかを正しく理解している人は少ないと言われているので、引きこもりについて詳しく解説していきたいと思います。
引きこもりとは?
引きこもりとは、仕事や学校に行くことなく自分の部屋や自宅に閉じこもっている状態という風に思っている人がほとんどだと思います。
厚生労働省が定義しているひきこもりとは、
「様々な要因の結果として、社会的参加を回避し、原則的には6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(引用:厚生労働省「ひきこもり関連施策」)」
となっています。
ここで言う社会的参加とは仕事以外にも、学校や交友関係なども含まれています。
引きこもりの定義に基づいて該当する人を「社会的ひきこもり」と呼ばれることもあります。
この定義から現在引きこもり状態にある人の数は、日本の社会全体で100万人近くいると言われています。
引きこもりの状態に陥ってしまう原因や引きこもりの状態は、同じではなくひとりひとり違いがあるため、引きこもりの状態に陥ってしまった人を抱えた家族の苦労は言葉では言い表すことのできないものとなっています。
引きこもりになる可能性のある病気は?
引きこもりは、病気や障害が原因となって起こることもあると言われています。
特に多いと言われているものは、
・統合失調症
・不安障害
・気分障害(双極性障害)
の3つで、過剰な精神的ストレスによって発症することも多く、専門医の診断・治療を適切に受けることが大切です。
統合失調症
統合失調症は、10代後半~30代半ばに発症するケースが多いと言われています。
主な症状としては、
・被害妄想がひどく現れる傾向が強い
・誰かに嫌がらせをされている
・見張られている
・だまされている
などと思い、社会生活を送れなくなり、引きこもりの状態となってしまいます。
不安障害
不安障害の症状によってひきこもりを起こしている人もいます。不安障害には、「分離不安症」「選択性緘黙」という2つの種類があります。
分離不安症は、両親や兄弟など自分に愛着のある人から離れると不安を極度に抱いてしまうもので、両親や兄弟などから離れ、学校や職場に行くことに対して極度に不安や抵抗を感じ引きこもりの状態に陥ってしまいます。
選択性緘黙は、家庭など自分が安心できる場所や人とは会話することができる一方で、学校や職場などでは一切話をすることができません。小児期に発症することが多く、適切な治療を受けることで改善できる可能性もありますが、持続する人もある一定数以上います。
女性に多く発症すると言われており、会話ができないことから、人とのコミュニケーションを取ることができず引きこもりの状態に陥ってしまいます。
双極性障害(気分障害)
18歳前後に発症するケースが高い双極性障害(気分障害)は、調子の良い時と悪い時がはっきりと見られるため、完全な引きこもりの状態にならない人も少なくありません。
症状としては、うつ病と軽躁病が見られるもので、抑うつ状態となっている時に引きこもり状態になる傾向が高いと言われています。
ニートとはどういう状態? 詳しく知ろう
ニートとは、厚生労働省では、「15歳~34歳で、学校や家事に従事していないにも関わらず、働く意思のない若者」という風に定義しています。
引きこもりと何が違うのだろうと思う人も多いかもしれませんが、ニートとはどういう状態の人のことを言うのか、詳しく紹介していきますね。
ニートとは?
ニートとは、若年無業者とも呼ばれていますが、海外では、通学、通勤、家事、終業訓練を行っていない人という意味で「Not in Education、Employment or Training」と呼ばれ、それぞれの頭文字をとりニートと呼ばれるようになりました。
引きこもりとニートの大きな違いである年齢という線引きは、現在では難しい状況になっており、ニートと呼ばれる人の中には、35歳以上の人も増加傾向にあり、このような人を引きこもりとは呼ばずに「高齢者ニート」と呼び、社会的な問題となっています。
これまでは、仕事に就いていたけれどある日突然ニート状態にという人は、なぜニートになってしまうのでしょうか。
その理由は、
・人とのコミュニケーションがもともと苦手で、何かをキッカケに上手くいかなくなってしまった
・受験や就職に失敗し、その失敗した経験を克服することができなくなってしまった
・親の援助があるため、生活の心配がなくそもそも無理して働く必要がないと思っている
・将来の夢など向上心を持って仕事などに取り組むことができない
など、ニート状態の人によって様々です。これ以外にも、病気や怪我がキッカケとなって働くことができなくなってしまう人や、仕事以上に趣味をライフスタイルの中心に置いているからニート状態になっているという人もいます。
ニートと呼ばれる年齢の定義が変更になったのは本当?
ニートと呼ばれる年齢の定義は、厚生労働省では、15歳~34歳までをニートに該当する年齢と定義していますが、内閣府では15歳~39歳までとしており、もともと厚生労働省と内閣府では違っていました。
その違いを2018年からニートと呼ばれる年齢の定義として、15歳~39歳までという風に現在では合わせるようになっています。
なぜ、引きこもりとは違いニートには年齢定義があるのでしょうか。
その理由は、日本の統計調査の慣習によるところと言われています。
日本では、年齢を15歳~34歳を「若年層」として区切っており、この若年層の人たちの就業状態などを元にニートの割合を計算していることが元になっていました。
この統計調査の慣習によって、ニートは15歳~34歳という年齢とし、35歳以上44歳までのニート状態の人のことを、中年無業者(中年ニート)と実は呼ばれているのです。
年齢によって区切られているものの、年齢以外の部分でのニートという定義は違いはありません。
引きこもりやニートは日本だけ?海外は?
引きこもりやニートの状態にいる人は、日本だけなのか気になりますよね。
実は、日本だけではなく海外などどこにでも引きこもりやニート状態の人はいるようです。
OECDが2018年に行った調査によると、日本だけではなく海外にも引きこもりやニート状態の人はとても多くいることがわかっています。
OECD加盟国に住んでいる15歳~29歳までの平均ニート率は13.4%。40人に4人~5人はニートの状態の人がいるという計算となっているのですから想像以上に多いと感じるのではないでしょうか。
国別に見てみると、一番高いのが27.2%のトルコ。次いで25.1%のイタリア、22.8%のギリシャと高い数値となっています。
日本は9.8%という数値が出ており、世界で見ると高い数値ではないことがわかります。
引きこもりやニートの状態でいる割合など世界で調査されていますが、ニートの状態でいる人のことに対して、日本ほど問題視している国はほとんどありません。
ニートでいることに対してポジティブに捉えている人が多いという日本では考えられないような意識を海外の人たちは持っているようです。
まとめ
引きこもりとニートの違いについて説明してきましたがいかがだったでしょうか。
どちらも自宅や自室に閉じこもるというイメージが強く、「大差ないのでは?」と思っていましたが、年齢や状態に違いがあり、引きこもりとなっている人の中には、精神的疾患を抱えている人がいるということもわかりました。
学校や仕事など社会生活に適応できない人が自宅や自室という限られた空間の中で日々生活しているのも、人それぞれ理由があり、何か重大な疾患を抱えているのかもしれません。
引きこもりやニートの状態に陥っている人が家族など身内にいるという場合や、自分が引きこもりまたはニートの状態という場合は、決して抱え込むのではなく、信頼できる人や、医師などの専門家へ相談するようにしましょう。
精神的疾患を抱えている人は適切な治療を受けることで、また社会生活を過ごすことも十分可能なので、ひとりで苦しまずに一歩踏み出してみてはどうでしょう。