フリーターで働こうと考えている人にとって心配なのは健康保険などの厚生面です。
正社員と比較すれば自由に時間が使えることの多いフリーターですが、自由な分社会的な保障に関してはやや弱い立場にあることは否めません。
1990年から2000年代にかけてフリーターが急増して以来、フリーターはひとつの労働形態として社会的に定着した感がありますが、万が一病気になった時の保障が今ひとつ不安であることも確かです。
フリーターでも健康保険に加入することはできるのかどうか、加入するにはどうしたらいいのかどうかなどについて詳しく見ていきましょう。
フリーターが加入できる健康保険にはどんなものがあるか
フリーターのメリットはプライベート生活を重視した働き方ができることにあります。
劇団員で芝居をやっている人、将来プロのミュージシャンになりたくて仲間とバンド活動を続けている人などにとって時間的に制約を受ける正社員の仕事は続けていきにくいものです。
こういった場合には時間が自由になるフリーターの仕事の方が融通が利きますし、自分の生活スタイルに応じて仕事を選べるというメリットがあります。
フリーターならシフトも自由に組めるので、バンド活動などを優先させることも無理ではありません。
とはいえ、健康保険などの面をきちんとしておかないと病気になった時に高額な医療費を払わなければならなくなる心配もあります。
健康保険に入っていない人は「若いからだいじょうぶ」などと高を括っていないで、まさかの場合の医療費について早めに準備をしておくことをおすすめします。
健康保険には「国民健康保険」「協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)」「組合健保(組合管掌健康保険)」「共済組合(国家公務員共済組合・
地方公務員共済組合・私立学校教職員共済)」などの種類があります。
日本は「国民皆保険制度」の国ですので、日本に住んでいる人は基本的に全員国が定めている医療保険に加入しなくてはなりません。
ここではフリーターでも加入できる健康保険について具体的に見てきましょう。
国民健康保険
フリーターの人にとって一番なじみの深いのが国民健康保険(国保)です。
国民健康保険は企業に在籍していない自営者や農業従事者が主な加入者ですが、社会保険に加入できないフリーターでも入ることができるというメリットがあります。
国民健康保険では保険者は居住している地方自治体ですので、手続きは勤務先ではなくて地方自治体の窓口で直接自分で行います。
国民健康保険に加入しておけば医療費・治療費の自己負担は3割で済みますので何かと安心です。
日雇健康保険
日雇健康保険というのは限られた一定の期間だけ雇用される場合に加入することのできる特殊な健康保険です。
基本的には雇用期間が1ヶ月以内の人に適用されることが多いのですが、手続きは自分で行わなければなりません。
社会保険
フリーターとはいっても条件さえ整っていれば社会保険に加入することも可能です。
ただし現在、配偶者の扶養控除を受けている場合などは社会保険に加入することによって扶養控除を受けられなくなることもありますのでどちらが得かよく考えてから加入しなければなりません。
フリーターが国民健康保険に加入する際のポイント
フリーターが最も手軽に加入できるのは国民健康保険です。
日本ではもともと、子供が出生した手続きを行なった日から国民健康保険に加入しているのが原則ですが、社会人になって社会保険や共済組合に加入すると資格を喪失します。
ですから大学を卒業して一旦正社員としてお勤めを始めたけれど退社してフリーターになった人は再度自分で手続きして国民健康保険に加入することになります。
国民健康保険に加入するためには健康保険料を払わなければなりませんがその額は地方自治体によって若干異なります。
フリーターでも収入の多い人は払わなければならない健康保険料も高くなりますので、大体いくらぐらい払わなければならないのかあらかじめ調べておくといいでしょう。
国民健康保険の加入手続き
国民健康保険に加入するには、居住する地方自治体の国民健康保険課窓口に行って手続きを行います。
窓口で国民健康保険に加入したい旨を伝え、申請書類に必要事項を記入するだけですが、この際には本人を確認できる書類を持参することをおすすめします。
できればパスポートや運転免許証など写真付きの本人を証明できる書類がおすすめですが、これと合わせてマイナンバーカード通知カードも持参しましょう。
親の社会保険や国民健康保険の被扶養者だった場合
フリーターの中にはこれまで親の社会保険や国民健康保険の被扶養者だった人も多いと思います。
年間の収入が130万円未満であれば引き続き親の保険の被扶養者になることができますが、収入が130万円以上の場合には親の扶養から外れてしまいますので、自分で国民健康保険に加入して保険料を払わなければなりません。
親の扶養から外れる場合には「健康保険資格喪失証明書」と呼ばれる書類を親の勤務先から発行してもらい、これを持って手続きに行く必要があります。
任意継続被保険者とは?
フリーターが前に勤めていた職場を退社する際には任意継続被保険者となるか、それとも自分で国民健康保険に加入するかを選ぶことができます。
任意継続被保険者というのはというのは会社を辞めても引き続き個人で社会保険に加入できるという制度です。
任意継続被保険者となった場合には保険料を全額自己負担で納めなければなりませんので、国民健康保険に新たに加入するのとどちらが得かをよく考えてから選択する必要があります。
自分で国民健康保険に加入する方を選んだ時は、親の扶養から外れる場合と同様に申請手続きの際「健康保険資格喪失証明書」を提出しなければいけませんので、早めに以前の勤務先に請求しておくことをおすすめします。
国民健康保険以外にフリーターが利用できる健康保険
国民健康保険は加入するためにクリアしなければいけない特別な決まりというのは特にありませんので、フリーターとしては入りやすい保険です。
ただし収入の金額によっては健康保険料がかなり高くなってしまうケースもありますので、加入申請手続きに行く前に保険料などについてよく調べておく方が得策です。
日雇健康保険
日雇健康保険というのは30日以内などの短期の仕事を続けて行なっていきたいと考えているフリーターのための健康保険です。
この健康保険に加入するためには、まずハローワークで「雇用保険日雇労働被保険者手帳」の交付を受ける必要があります。
日雇いで労働をして、勤務先から賃金を受け取る時にこの雇用保険日雇労働被保険者手帳を提出すると、会社が印紙を貼ってくれますが、この印紙に消印をすることで保険料が納付されたことになります。
健康保険印紙が2ヶ月で26枚、または6か月で78枚以上であれば「健康保険被保険者受給資格者票」を受けることができます。
病気や怪我をして治療・診療を受ける際にはこの健康保険被保険者受給資格者票を提示すれば費用を全額自己負担しなくても済みます。
一つ留意しておきたいのは、日雇労働保険に加入してその恩恵を受けるためには、日雇い労働者を雇用する件はハローワークから認可されている企業でなければならないということです。
ちなみに日雇労働保険に加入しておくと、仕事が見つからなかった場合に給付金を受けることができるというメリットがあります。
フリーターでも社会保険に入れることがある
フリーターだと社会保険に入れないと思い込んでいる人も多いようですが、条件さえきちんと満たしていれば加入することも不可能ではありません。
社会保険の自己負担は以前は1割でしたが、2018年6月から国民健康保険と同じ3割に変更されています。
ですから治療や診察を受ける際には国民健康保険と同じなのですが、社会保険の場合には健康保険料を会社が半額負担してくれるという大きなメリットがあります。
その上厚生年金にも加入できるようになるので、トータルで見れば健康保険料を全額自己負担しなければならない国民健康保険よりもかなりお得です。
フリーターとして仕事をする場合、1ヶ月間の短期バイトでは社会保険に加入することはできません。
最低でも2ヶ月を超えて働く条件で、しかも1週間に働く時間と1ヶ月に働く日数が正社員の3/4以上であれば初めて社会保険に加入することができます。
尚、フリーターといっても1年以上働くことが見込まれる場合には年収が106万円以上で週の労働時間が20時間以上であれば社会保険に加入することをは義務となります。
もし国民健康保険に入ってしまっている場合には社会保険に加入する義務の有無を勤務先で確認し、どうしても社会保険に入らなければならない場合には現在の国民健康保険から脱退する手続きをしないと二重に健康保険料を払ってしまうことになるので注意したいものです。
自分が社会保険に加入しているかどうかは給与明細の「健康保険」あるいは「雇用保険」の欄を確認しましょう。
この2つの欄がゼロでない場合には社会保険に加入していることになります。
まとめ
フリーターというのは自由な働き方ができるとはいえ、健康を損ねてしまえば正社員のような行き届いた保障が得られない不安定な立場ですから、健康保険に関してはよく情報を収集し、自分で健康保険料を負担してでも環境を整備しておくことが必要です。
ちなみに複数の職場を掛け持ちで働いている場合、一つの会社で社会保険に入っていれば他の勤務先では健康保険料を納める必要はありません。